研究概要:議論における発言間の階層関係に基づく対話的情報構造化

キーワード:議論構造化、知識表現、情報探索システム、時系列メディア分析、音楽理論 GTTM

本研究では、様々なアノテーション情報が付与された会議コンテンツを対象に、発言間の階層関係に基づく対話的情報構造化コンセプトを提案し、これを実現するシステムを構築しました。近年、様々な分野において、電子化された膨大な情報が蓄積されています。知識管理の分野においては、デジタル化されたマルチメディアデータを容易に取り扱うことが可能になり、音声・映像を会議議事録に組み込み可能なシステムも増えてきました。これらのデータに含まれる情報量は膨大なものであるため、そこから議論の意味を理解し、有益なデータを発見することへの期待が高まっていますが、こうした技術の確立は、マルチメディアに含まれるメタデータの考慮、異なるユーザによる視点の切り替えといった点において、計算理論による大量の行動データと議論構造の理解との結びつけが一般に困難であります。そこで本研究では、議論における情報構造化のための手法として、音の時系列イベントを構文解析する技術である音楽理論 Generative Theory of Tonal Music (GTTM) の楽曲分析アプローチに基づいて、発言間の関係や階層的な重要度を表す木構造とその抽出方式を提案しました。そして、本構造化手法を計算機上への実装に対する問題に対処するためのアルゴリズムを提案し、プロトタイプシステムを設計しました。さらに、議論における発言間の階層関係に基づく情報構造化手法を応用し、木構造をインタラクティブに操作することで、異なる観点に対応した議論の構造化や抽象度の異なる要約といった対話的な情報探索を支援するための議事録生成システムを構築しました。本研究で得られた成果は、知識表現や自動要約、さらに情報探索システムの分野に大きく貢献するものであると考えます。